避妊・去勢手術をお考えの飼い主様へ

当院では、いつか子供を産ませたいなどの特殊な理由がある場合を除き、避妊・去勢手術を実施することを推奨しています。
もちろん、避妊・去勢手術は義務ではなく任意ですから、最終的な判断は飼い主様に委ねることになりますが、この項では当院が避妊・去勢手術をおすすめしている理由に関してもご説明していきますので、ご参考になさってください。
避妊手術
外科的に卵巣および子宮を摘出する手術です。状況によっては卵巣のみを摘出する方法もありますが、当院では卵巣・子宮の両方を摘出する方法を採っています。
避妊手術により卵巣を摘出することで、雌性ホルモンの分泌がなくなり発情が来なくなります。これにより、妊娠や性ホルモンに関与する病気、行動上の問題を抑えることができます。
当院での避妊手術はワンちゃんもネコちゃんも1泊2日のお預かりで対応しています。痛みのピークが術後8~10時間前後に訪れることや、おうちに戻ることで元気に動いてしまって傷口が安定しないなどの恐れがあるためです。
しかしながら、夜間はスタッフが常駐しているわけではないので、ご希望があれば日帰りで退院とし、夜はおうちで様子を見ていただくこともできますのでご相談ください。
【避妊手術のメリット】
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女性ホルモンが関与する各臓器の病気の予防
子宮蓄膿症、卵巣腫瘍は原因となる臓器を摘出しますので、発生リスクはゼロになります。また、乳腺腫瘍の発生率も下げることができます。
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望まない妊娠の予防
特に多頭飼育の場合や、屋外飼育の場合には有効です。
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発情に伴う体調不良の回避
発情中はホルモンバランスの崩れにより元気・食欲低下が見られますが、手術により回避できます。
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発情兆候の軽減
ワンちゃんでは外陰部からの出血、ネコちゃんでは鳴き声を上げるなどの発情兆候を抑えることができます。
去勢手術
外科的に精巣を摘出する手術です。これにより雄性ホルモンの分泌がなくなり、ホルモンに関連して起こる病気や行動を抑えることができます。
避妊手術と異なり、お腹を開けての手術ではありませんから、手術後は日帰りで退院となります。
なお、ワンちゃん・ネコちゃんの男の子に発情期はありませんが、女の子の発情中に分泌されるフェロモンを嗅ぐことによって興奮するので、未去勢の男の子の周辺に未避妊の女の子がいる場合には、早めの対応を心がけてください。
【去勢手術のメリット】
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雄性ホルモンが関与する各臓器の病気の予防
特にワンちゃんで有効です。精巣腫瘍、前立腺肥大、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫瘍などの発生を防ぐとともに、一度患った後でも再発防止として効果があります。
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雄であるが故の行動の抑制
威嚇行動やマーキング、縄張りを広げるための探索欲求などを軽減できます。ただし、手術によって性格が変わるわけではないので、これらの行動が本能的な欲求ではなく性格からくる場合には改善されない場合があります。
【避妊・去勢手術のデメリット】
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全身麻酔の影響
健康な体であっても、全身麻酔に伴うリスクはゼロではありません。そのため、当院では術前検査を実施してからの全身麻酔を推奨しています。
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生涯を通して生殖活動が不可能になる
避妊手術も去勢手術も、摘出した臓器は元に戻すことができません。わが子の子孫を残したいという場合には手術の適応とはなりません。
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代謝が変わることでの肥満傾向
手術後の必要エネルギーは7割ほどに減るとされています。今までのフード量だとカロリーオーバーとなり、余った分のエネルギーはお肉として蓄えられていくことになるので注意が必要です。
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尿失禁
特にワンちゃんの女の子に起こることが多いのですが、ホルモンバランスの失宜により、ふとしたときに「お漏らし」をしてしまいます。卵巣から出るホルモンの量に依存する病態なので、治療はホルモン剤を内服することで行いますが、治療は一生涯に渡ります。
避妊・去勢手術は病気を治すための手術とは異なり、健康な体にメスを入れることになりますので、ご家族の中でも意見が分かれやすい処置です。また、元には戻せない手術ということも飼い主様が悩まれる要因のひとつです。それぞれのメリット・デメリットに関しては院内でもご相談を承っておりますので、お気軽にスタッフまでお声がけください。